マッスルメモリーとは?筋トレを中止しても以前の筋肉の状態に戻しやすくなる

マッスルメモリーとは
昔からボディビル業界ではよく知られている「マッスルメモリー」があります。怪我や多忙により長期間筋トレができない場合、筋肉量は徐々に低下していくものです。

しかし一度鍛えて大きく強くなった筋肉ならば、再び筋トレをすると初めて筋トレをした人よりも早く筋肉が成長します。

一度成長した筋肉の状態を記憶しているためと表現し、このような状態をマッスルメモリーと呼んでいます。

筋トレを中断しても再開すれば早く元に戻りやすいことを発見

2018年にイギリスのキール大学リバプール・ジョン・ムアーズ大学ノーザンブリア大学マンチェスター・メトロポリタン大学が行った筋トレを一旦中断してからまた筋トレをするとどうなるか、という実験がありました。

  1. 筋トレ経験がない男性8名に週3回の筋トレを7週間行わせた⇒筋肉量が増えた
  2. その後7週間筋トレを中断させた⇒筋肉量がもとに戻った
  3. 7週間筋トレ中断後に再び7週間筋トレをさせた⇒筋トレ開始前よりもさらに筋肉量が増えた

この実験でわかったこと

  1. 筋トレをすれば筋トレ未経験者も筋肉量が増える
  2. 筋トレを中断すれば筋肉量は減っていく
  3. 筋トレを再開すると最初よりも早く筋肉量が増えて成長する

この実験では一度筋肉をつければ、筋トレを中断して筋肉量が減ったとしても再び筋トレを再開することで以前と同等、それ以上の結果となる可能性を秘めている、これがマッスルメモリーです。

イギリスの実験では筋トレ経験のない人を集めたため、最後の7週間でマッスルメモリーが発動し、元の筋肉量まで増やしながら筋トレの質を高い状態でできた慣れによってより効率よく筋肉を成長させることができたと考えられます。いずれにせよ、一度筋肉をつけると筋トレを中断しても筋トレによる成長スピードは早くなると考えられます。

マッスルメモリーの原理は解明されていないが、ほぼ確実に再現できる事象

筋肉それ自体が覚えているかどうかは別として、マッスルメモリーによるスムーズで早い筋肉の成長スピードがあることは多くのアスリートたちによってほぼ確実に実感されていることです。

怪我などで一時的に筋トレができなくても、元の状態に素早く戻せるのはマッスルメモリーがあるからと考えられます。では私達の体ではどのような原理でマッスルメモリーが働いているのかを書いていきます。

筋繊維の核の数が筋トレで増えたから

筋トレをすると筋繊維にある核の数が増えるとされています。大雑把に言えば、核が増えていき結果的に筋肉が大きく強くなっていくのですが、筋トレを辞めたからといって核の数は減少することはないため、再び筋トレをすれば優位に筋トレの効果が出るのではないかと考えられています。

神経系の発達が失われないから

筋トレに限らず、すべての運動はある程度の運動学習を繰り返すことで、脳が体を動かす神経系の働きが発達していきます。それによってスキルが向上したり、運動能力が向上します。

筋トレにおいても、ベンチプレスのフォームやスクワットのフォームなど、効果的なフォームを最初から知っているし、正しいフォームで正しく筋トレできる神経系の記憶があるため、筋トレ未経験者よりも明らかに筋トレが上手く、筋肉も付きやすいのではないかという説。

いずれにせよ筋トレした過去は消せない

マッスルメモリーの原理は明確に解明はされていないものの、データや歴史を見る限り、過去の筋トレが休止後にも維持され、再び筋トレを再開したときに助けになっていることは間違いありません。

怪我からの復帰など、リハビリとトレーニングを人一倍行ったであろうことは容易に想像できるものの、一般人がリハビリをして同じような筋肉や運動神経などの状態に達することは不可能に近い事例が多いです。

10年間筋トレをやめていてもマッスルメモリー効果がある?

過去に行った筋トレにより得られた筋肉量やサイズは、一時的に休止したあとでもまた助けになってくれる、元の筋肉に近づくことは難しいことではないと言えます。

では筋トレや練習を10年間辞めていた場合、それでもまだマッスルメモリーの効果を享受できるのか。

東京大学の石井直方教授によると、一度筋肉の核が増えて筋繊維が太くなったなら、それは10年後もマッスルメモリーが残り続け、筋トレ再開後すぐに筋肉が肥大していくだろうと結論づけています。

10年間追跡した調査がないため、この結論が正しいかどうかは判断が分かれそうですが、だとしても成長期に運動部でハードに練習をしていた人が、社会人になって筋トレを再開する場合、マッスルメモリーによって筋肉の成長が普通よりも早く得られる可能性は十分考えられるでしょう。